オンライン・ショップの開設を記念して、登り窯で焼成を行いました。燃料である薪の灰が被ったり、不安定な窯の温度による釉調の変化を避けるため、磁器、なかでも繊細な細工や絵付けの作品では、現在は登り窯焼成がほとんど行われていません。しかし、薪を使った焼成ならではの、柔らかい雰囲気は、ガス窯や電気窯とはひと味もふた味も違うものです。
参加窯元
| 平戸松山 | 平戸洸祥団右ヱ門窯 | 嘉久正窯 | 玉峰窯 | 今村房の輔 |
磁器の登り窯焼成は、本来、灰が被ることを避けるため江戸時代から昭和にかけては「匣鉢(さや)」という、覆いのなかに入れて焼いていました。今回は、匣鉢にも入れず、登り窯の特徴をより強く求めました。
正面が平らで二つの焚き口がある珍しい形は、70年ほど前まで、このみかわち地区で使われていた共同窯を復元したものです。
焚き口が二つのため、二人の体制で焚いていきます。
急激な温度変化は破損を引き起こしますから、最初は徐々に温度を上げていきます。
磁器の白さを保つためには、1000度手前あたりから酸素の少ない状態(還元焼成)をつくり、それを保つ必要があります。
薪を投じると、窯のなかの温度は一旦下がります。再び上がり、さらに下がり始めたとき薪を投じていきます。
1室めが目標の1300度近くなると正面からの薪の投入を終え、2室めに移っていきます。
投入の際は、酸素が入りすぎないように、蓋の開閉を素早く行います。
2室めが1300度近くに温度になると3室めに移動していきます。
1000度から目標の1300度には上がりにくく、今回も半日ほど要しました。
焼成終了。窯全体は熱で膨張しています。
焼成後も窯が熱をもっているため、3日後に窯を開きました。
灰が被りすぎたり、窯変(炎によって予想をしなかった釉の色が発色する)が著しいものが多く、改めて磁器の登り窯焼成の難しさを実感しました。そこから選ばれた作品が、ここに並びました。